【デジわかオリジナル1000人調査!!】 孫は、おじいちゃん・おばあちゃんに、どんなアプリを教えているのか?
当研究所ではシニア層のデジタルデバイド解消のためにスマホの活用は不可欠と考えております。ただしシニアの方々が独力でスマホを使いこなすのは決して簡単ではなく、使い方を覚えるためにはスマホ教室や様々な方の支援が必要です。
その中でも、一番身近な支援と言えば家族からの支援であり、今回はその中でも祖父母から一番年齢の離れている“孫”に注目しました。孫は自分のおじいちゃん、おばあちゃんにスマホの使い方を教えているのか?教えているとしたら、どんなアプリを?どんなきっかけで教えているのか?を調査しました。
※過去の参考記事:「スマホ教室は高齢者のデジタルデバイドを解消できるのか」
【調査概要】
調査エリア:全国
対象者数:n=1000
調査手法:インターネット調査
調査時期:2023年7月
対象年齢:15~49歳/年齢構成(下記グラフ参照
◆祖父母にスマホを教えた経験(年代別)
全世代全体(15~49歳):38.3%
10代(15~19歳):49.5%
20代(20~29歳):41.3%
30代(30~39歳):28.1%
40代(40~49歳):27.5%
祖父母にスマホの使い方を教えた経験は全体では38.3%。年代別に比較してみると、10代が最も高く41.3%、40代が27.5%と、年代が高くなると低くなる傾向にありました。これはスマホの使用時間と比例しており(※1)、常にスマホを手にしている若年層の方が教える機会が多く、祖父母の側からも使い方を聞きやすいことがうかがえます。 (※1:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)
◆教えたことがあるアプリ
祖父母に教えたことがあるアプリは、全年代で「LINE」が一番でした。「LINE」の利用率は83.7%となっており(※2)、いまや連絡ツールのインフラ的存在になっていることから、これは当然の結果といえそうです。「LINE」「ビデオ通話」が上位にあがっている世代が多いことから、家族とのコミュニケーションにおいてデジタルを活用したい気持ちが強いと言えそうです。2番手以降は実用的なアプリ、「天気予報」「ニュース」「バーコード決済」「地図」が続き、その次に「Twitter」「Instagram」といったSNSが続きます。年代によって順位に差はありますが、全体的には同様のアプリを教えている傾向が見て取れます。 (※2:出典「モバイル社会研究所 2023年4月レポート」)
◆教えたきっかけは?
最も高かったのが、「生活を便利にしてあげたいから」、二番目が「常に連絡を取れるようにしておきたい」と、この二つの理由が突出して高くなっています。それに続き「一緒に楽しみたいから」、「いつまでも元気でいてほしいから」、「家族の様子を見せたいから」などがあげられます。全体にポジティブな理由と感じられますが、反面「いちいち聞かれるのが面倒だから」といったネガティブな理由も上位に入っています。
◆教えるのを諦めたアプリは?
「教えるのを諦めたアプリ」を聞いたところ、こちらも「LINE」が一番でした。前述の通り「LINE」は全体の数が多いのでこの結果も理解できますが、比較的操作がシンプルな「LINE」ですら諦めてしまうことに高齢者にとってスマホ利用が難解であることを感じます。
それに次いで諦める機会が多かったのが「twitter」や「instagram」といったSNSでした。SNSはスマホの使い方を覚えるだけではなく、自分自身からの情報発信や、趣味・関心などが共通するグループとのコミュニケーションが必要であり、よりハードルの高いアプリと言えそうです。それに次いで多いアプリが「ビデオ通話」「バーコード決済」「ポイントアプリ」など、生活を便利にするアプリでした。
◆今後教えたいアプリ
今後教えてみたいアプリを聞いたところ、こちらも首位はLINEでした。それに次いで、生活を便利にするアプリや、「お薬手帳アプリ」「ヘルスケアアプリ」などの健康関連のアプリが上位に挙がってきており、祖父母の健康を気にしている様子がうかがえます。
※アプリ詳細
「ビデオ通話」:zoom、teamsなどのビデオ会議アプリ
「動画視聴」:Netflixやprime videoなどの動画視聴アプリ
「ポイント収集」:nanacoやdポイントなどのポイント収集管理アプリ 「公共サービス」:コロナ関連、マイナカード関連など
◆クロス集計 「教えたきっかけ」と「アプリ」の相関
「教えたきっかけ」ごとに、回答した方がどんなアプリを教えているのかを分析してみました。下記の表は「教えたきっかけ」ごとに20%以上の回答のあったアプリをランキングしてみました。
教えた理由の上位の「生活を便利にしてあげたい」「常に連絡が取れるようにしたい」「一緒に楽しみたい」「いつまでも元気でいてほしい」については20%以上の回答があったアプリは7~9種類でした。それ以降は、「いちいち聞かれるのが面倒」というネガティブな理由を除いて、順位が低くなるほどにアプリの種類が増える傾向にありました。特に11位の「アプリを紹介すると特典がもらえる」は20%以上の回答が27種もあり、個々のアプリの回答率も高くなっています。この特典目当ての方々は数多くのアプリを教える傾向にあると言えそうです。
◆まとめ(考察)
調査の結果、自分の祖父母にスマホの使い方を教える孫は一定数いることが分かりました。調査前は、孫の年齢によって祖父母に教えるアプリには違いがあるのでは?と予想しておりましたが、そこに大きな差はなく、おおむね祖父母の年齢や生活に合わせたアプリを薦めていることが分かりました。祖父母に教えるきっかけも、「もっと便利になってほしい」「常に連絡が取れるようにしたい」「一緒に楽しみたい」といった、祖父母の生活を良くしてあげたいという理由が多く挙げられていました。 ただし、このような理由と同時に、アプリの紹介特典を狙って数多くのアプリを教えている様子もうかがえます。
また、教えても途中で諦めてしまった例も少なくないようです。これはスマホ操作の難解さが一番の要因といえますが、同時に、スマホの『便利さ・楽しさ』の捉え方の違いも要因といえそうです。教える側が便利だと感じるアプリも、高齢者にはその便利さを実感できない場合も少なくありません。『楽しさ』の捉え方の違いが、SNSを諦めてしまう要因になっているとも言えそうです。「スマホでもっと便利になってほしい」「楽しんで欲しい」という思いからの行動が、高齢者にとってはストレスになりスマホを拒絶する原因になっているのかもしれません。
※過去の参考記事:デジタルデバイド原因マップ~デジタルスキル習得過程に潜む14の原因
スマホアプリは常に新しいアプリが登場し、当研究所の20~30代の研究員でも意味の分かりづらいアプリが増えているようです。そんなアプリでも若年層は自然に、楽しく、便利に活用しています。
デジタルデバイドというと、デジタルリテラシーの低いシニア層との活用格差だと考えがちですが、誰もがいつのまにか置いていかれる可能性を秘めています。単なる年齢の違いだけではなく“世代間における価値観の違い”、これが様々な断絶を生み出しているのかもしれません。単にデジタルスキルを高めるだけではなく、若年層はシニア層の価値観に寄り添い、シニア層は若年層の価値観に興味を示す、格差解消のためにはそんな考え方が必要といえそうです。きっかけは何であれ、スマホを通じた祖父母と孫の良好なコミュニケーションが増やすこと、デジタル社会の格差を解消できるかもしれません。
デジタル分かる化研究所 安藤亮司